ケアマネージャーが来ると伝えると母はとても嫌がる。元々が大の話好きで本来は来客を嫌がる人ではないのだが、他人とコミュニケーションを取るのを面倒くさがるというのが認知症になっている人の特徴のひとつである。
だから僕はいつものように母にケアマネ訪問を伝えずに当日を迎えることになる。
そして母はいつものように「来るのが決まっているのなら教えてよ。部屋を片づけるんだから」と言う。
元々が母は綺麗ずきだった。認知症になる前は掃除魔だった。そして生まれた僕は汚し屋だった。父も汚し屋だった。母が認知症になる前は僕と父が散らしっぱなしの家を片付けて回っていた。父が亡くなって残された母が認知症になってからは、母が片付けられなくなったから僕が頑張るしかなくなった。居問は先週片付けたから一応は片付いた状態だったのだが、元来片付けずきの母から見るとまだまだ甘いわけだ。というか、「他人」が来ると急にやる気スイッチが入ってかつての母に一時的に戻る。プライドの高い人間というのもあり、他人様には片付いていない部屋は見せられないという感情が蘇るようだ。
一時的な物忘れは時を追うごとにどんどんひどくなっていくが、いざという時の火事場の馬鹿力的な変化にはいつも驚く。
ちなみに、妹も片付け魔だ。僕が片付けた部屋を妹が見たら、やはり一発でダメ出しを喰らうだろう。
時間が来てケアマネが帰るから送り届けようと玄関まで行くと、追って母がやってきてケアマネに話しかけて、そして長話を始めた。いつもは無い光景だ。話し足りなかったのだなあ。僕はケアマネさんに会釈してその場を離れた。母とケアマネさんとふたりにして会話を続けてもらった。さて、この4月から母のケアマネージャーが前任者から変わったのだが、母は新しいケアマネさんを気に入ったようだ。