中山美穂さんが3年前にアルツハイマー病にかかった作家の役を演じた映画発表の記者会見の中で、中山さんが認知症に掛かっているご自身のご祖母を「可愛いらしく感じる時がある」と発言されていたような記憶がある。
その発言を聞いて、僕はいたく同感してしまった。
人間は生まれて成長して大人になる。そして成人して年を重ねて円熟を迎えた後に老化が始まる。老化がどんどん進むと、自分自身をコントロールする脳の機能が弱まっていき、他人を思いやる想像力が消えていき、怒りっぽくなり、聞き分けが無くなっていく。
その状態は言う事を聞かない幼い子供のようでもあり、実際に駄々をこねたりもする。
かつては毅然として僕や妹や弟を叱り戒めていた母だったのに、今は逆に僕たち子どもが母を丁寧に窘める。
でも認知症に掛かる前の母は本当に立派な母親だったから、母の愚痴や駄々や癇癪を苦もなく受け入れることができる。
親と子の関係、人の一生の不思議さを感じてしまう。