37年前のある日、レンタルレコード店でLPを借りてきた。大学をぶらぶらしていた時に、校内に視聴覚室があることに気づいた。じゃああそこを一度使ってみようと思い、借りてきた2枚のLPを持ち込んだ。1枚がノイズ系のアバンギャルドなやつ。そしてもう1枚がデヴィッド・ボウイ「ジギー・スターダスト」。
視聴覚室には視聴ブースがいくつか設置されていて、 レコードプレーヤーとヘッドフォンが常備されていた。
「ジギー・スターダスト」の1曲目に針を落とした瞬間に、衝撃が走った。音の感触や音色、声、メロディーも何もかも、今まで聞いたことのあるポップ・ミュージックとは全く違った。何がそんなに違ったのかは未だににさっぱりわからないのだけど、とにかくその頃の僕の心は荒れ果てていて、メロディーもハーモニーも感じなくなっていた。ノイズ・ミュージックばかり聴いていた。そんなあの頃の僕を、一瞬にしてポップ・ミュージックに引き戻した忘れられない音楽体験だった。
その衝撃の出会いとなった1曲が、この「Five Years」。
あの時にこのアルバムに出会わなかったら、僕はどうなっていたのだろうか?
僕の闇の時代の壁に穴を開けて一筋の光を通した音楽だった。