消しゴムのニューアルバム「団欒」は、今までの僕のアルバムとは声の印象が全く違うでしょう。実はこれが僕の本来の声なんです。これまではこの声では録音することが出来なかった。
そのいちばんの原因は、ライブ慣れしてしまったこと。ライブ会場だとヴォーカルの音量が低いとマイクが他のPA機器と鑑賞してハウリングを起こしてしまう。キーンという耳障りな甲高いあの音です。
それを防ぐために、声の音圧が上がるような発声をすることに慣れてしまった。
しかし僕の声はパワータイプではなくて、柔らかい繊細なトーンだった。それが僕の声の良い部分だったんだけど、ライブではそれを崩して歌わなくてはならなかった。
そういう声の出し方に僕は慣れすぎてしまった。2年前にライブ活動を完全に停止して、自分自身が今までリリースした音源のヴォーカルを客観的に聴く事ができるようになって、今までの自分自身のヴォーカルの録音方法とか録音時の発声の仕方が間違っていたんじゃないか・・・・という事に気づいた。
そういう検証作業も含めながら、曲を作ってからリリースするまでに2年もの歳月を費やしてしまった。
でも、その甲斐はあったと思う。自分の音源を聴いて自分のヴォーカルに違和感を感じないのは今回が初めてだ。
リリース日の一週間くらい前に母を海までドライブに連れて行った。車の中で何も知らせずにアルバム「団欒」のテスト盤をカーステレオに入れてFMを切り替えてテスト盤を流した。「これ、誰が歌ってるの?・・・・優しい声だね」
この言葉を聞いた時に、自分の狙いがある程度は達成できているんだなあとわかった。少しホッとした。