19日の月曜日の話。
週1回母がデイケアサービスに通う日だ。
この日の朝はかなりの修羅場だった、
母が行かないと言って聞かない。毎度の事なんだけど、いつもよりも激しかった。叩いたり硬い物で殴ろうとしたり包丁を持ち出そうとしたりと、激高していた。
元々は育ちの良い上品で優しい人だった。優しいのは今も変わらないけど、スイッチが切り替わったときの豹変ぶりが凄い。昔なら考えられない下品な言葉と暴力。
それもこれも認知症の代表的な症状だ。だから、もう僕は驚かない。
そんなやり取りをしながら、朝食もとらずにデイケアサービスのお迎えが来る時間になった。「江ノ島の海に飛び込むんだ!」と言いながら、外に出かける身支度は既に済んでいた。昼食後の薬と施設で履く上履きもタイミングを見計らって用意していた。
玄関のピンポンが鳴った。僕はドアを開けた。そして母は介護スタッフの顔を見た途端、一転して穏やかな口調で介護スタッフと会話を始めた。何事もなかったかのように靴を履き、お迎えの車に乗り込んでいった。
自分の愛する母親にこういう表現を使うのはどうかとは思うが、麻酔銃を撃たれた猛獣のように急激な変化だった。
よその人の顔を見た途端に忘れていた協調性が蘇るんだと思う。ひとりだったり、いつも一緒に暮らす家族といる時はフィルター無しに自我が全開になってしまうんだけど、他人が来ると元に戻せる。これができるうちは、まだまだ母は大丈夫だ。
ほっとしたのだった。