「人よりほんの少し努力することがつらくなくて、ほんの少し簡単な事、それが得意な事だ・・・・しがみつけば必ず道が開ける」
作曲が好きな祐一が詩を書くのが好きな大将に言った、藤堂先生の言葉だ。
いい言葉だ。易しい表現だが、実に深い。
若い頃の僕は、途中でしがみつくことをやめてしまったんだなあ。だから道が開けなかった。これについては話しだすといくらでも長くなってしまうので、カット。
さて、その祐一の恩師藤堂先生がかつて大将と交わしたやりとりが、このあとのシーンに出てくる。
藤堂:「頼ることは恥ずかしいことじゃない。一生後悔するぞ。自分の才能から逃げるな。」
大将:「先生は、逃げたの?」
藤堂:「・・・・俺は・・・・無いものを追ったんだ」
これも深い。むちゃくちゃ深い。音楽で何度も壁にぶち当たり挫折を繰り返した人間の心に刺さる。奥まで突き刺さる。
その道で失敗した自分自身を省みるにあたってまず必要なことは、現実を受け入れることだ。”自分は成功しなかった=自分には才能が無かった”という現状を素直に受け入れることだ。
藤堂が大将に言うのは、老婆心てやつだ。自分自身がこうやって失敗したから、同じ道を若い将来ある人たちに歩んでほしくないという老婆心。
しかし、たいていの若い夢追い人は根拠の無い自信に溢れ、傲慢だ。その道の成功者なら別だけど、夢破れた敗残者である音楽教師の言うことなど信用しない。
かつての僕がそうだった、自分は天才だと思っていた。大人の言うことは信じなかった。
幸運なことに大将には、祐一という同い年の仲間がいた。心から共感し会えて、いっしょに同じ道を歩める仲間がいた。
もしかしたら・・・・だから祐一も大将も道を誤ることなく、順調に自分自身の才能を育て、やがて開花させることが出来たのかもしれないね。